ハマブン句会 投句箱

投句数はひとり5句まで
兼題俳句をひとつずつ入れてください
投句後の編集はできません。

新規書き込み
新しい記事から20件ずつ表示します。

09月27日(火) 11時49分36秒    箱の番人    2022年4月の入選句選者のコメント

星伸予選
特選
  青嵐シェークスピアの壁の穴
 真夏の夜の夢 「ホール・イン・ザ・ウオール」恋人同士が壁の穴を通してささやきあう。これは二人が結ばれるまでの障害を壁にたとえています。
青嵐は万緑をゆるがして吹きわたる風。「青嵐と万緑」これ以上の恋人同士がいるでしょうか。壁=行き止まり(暗)のイメージが穴という突破口(明)
発想もいいと思いました。
秀逸
  荒壁の鏝の返しや青嵐
 下塗をした壁に補修なのか仕上げ塗なのか。「鏝の返しや」に熟練された仕事ぶりが  想像出来ました。青嵐の季語が職人の爽快で明るい人柄まで見えてくるようです。
  どくだみは母の残り香深庇
 ドクダミの葉はハート型で臭いが強く、民間薬の原料として昔から重要とされています。母という存在は困った時には頼ってしまうけれど、普段は少々うっとうしい存在(私個人の感想)この句に惹かれたのはそういうことかもしれません。「母の残り香」は久しぶりに作者が実家戻られたのか、もうそこにお母様がいらっしゃらないのか。深庇が残り香を深めているような気がします。そういえば母の日が近いですね。



09月27日(火) 11時47分43秒    箱の番人    2022年4月入賞句 選者のコメント

折山正武選
特選 
  一斉に蛙の合唱母の郷
 久しぶりに故郷へお帰りになったのでしょう。帰郷を歓迎するかのように蛙が合唱した。技巧のない自然な詠みぶりに好感を持ちました。句の姿も整っていると思います。
秀逸
  降るたびに声のふくらむ蛙かな
 面白い捉え方です。蛙が鳴く時に喉がふくらむのを声がふくらむと表現されたのだと思います。雨が降るたびにふくらむ、しかもそのふくらみがひと雨ごとに大きくなっていきそうです。切れ字「かな」も上手く収まっています。
  白壁の揺るぐ青柳蔭ほのか
 白壁と蔭の句はよくありそうにも思いますが、作者は所謂類想などという観念はなく作られたと思います。たしかに白壁と蔭は印象的ですから、句にしたいという気持ちはよく解かるし、尊重したいと思います。
並選 
   牛蛙顔がなくなる大欠伸
 俳味たっぷりの句です。私はその情景を見たことはありませんが想像して笑えます。如何にもありそうです。口語的表現が味を深めているように思います。拍手。  
  静かなる白壁の街夏日影
 「静かなる」と説明しないで分かる五音の情景描写がないかと思いましたが難しいでしょうか。人通りの少なくなった旧い街並みが想像されます。尚、「夏日影」の影は陽光を謂い所謂物の蔭ではありませんね。「かぐやひめ」の「かぐ」や「輝く」の「かが」も同じ語源です。

09月27日(火) 11時15分20秒    箱の番人    2022年4月の投句一覧 その3

自由題
㉗五月雨に旅に向かうや時近し       
㉘夏めくやカンタービレに川の音      
㉙今年竹ひと夜に塔を下に見て      
㉚朧月家路へそぞろ歩きかな       
㉛観覧車天空に座す光る風        
㉜春うらら絵本背表紙ひうふうみい    
㉝篝火に煌めく神輿納めかな       
㉞青葉山だいだらぼっちのサラダかと   
㉟どくだみは母の残り香深庇       
㊱2Bのひらがな濃し一年生    
㊲退職の妹の上京豆の花      

09月27日(火) 11時14分20秒    箱の番人    2022年4月の投句一覧その2

兼題 蛙 青蛙 雨蛙
⑭蛙飛ぶ木の間の水面輪になりけり     
④雨蛙珪藻壁を登りをり          
⑮河鹿鳴く清水こぼるる大菩薩       
⑯あたり来ぬ釣りや蛙の目借時       
⑰牛蛙顔がなくなる大欠伸         
⑱硝子戸に腹を見せたる痩せ蛙       
⑲ひと啼きをお願い申す雨蛙       
⑳降るたびに声のふくらむ蛙かな     
⑨海渡り帰宅の壁に青蛙         
㉑別れ来て蛙の声のする方へ        
㉒雨粒を受けて半眼青蛙        
㉓蛙泳ぐ前足所在無しにかな       
㉔一斉に蛙の合唱母の郷         
㉕植える手の親父そっくり青蛙      
㉖二つの目青の中より青蛙   

09月27日(火) 11時13分07秒    箱の番人    2022年4月投句一覧 その1

兼題 壁
①乗り越える壁の向こうは虹かかり     
②朧夜の壁の落書き子は嫁に        
③青嵐シェークスピアの壁の穴       
④雨蛙珪藻壁を登りをり          
⑤白壁の揺るぐ青柳蔭ほのか         
⑥荒壁の鏝の返しや青嵐        
⑦盲壁仄とリラの香透かしけり      
⑧春灯や壁へ伝わる淡き影        
⑨海渡り帰宅の壁に青蛙         
⑩静かなる白壁の街夏日影         
⑪鯉幟翁は爽と壁テニス         
⑫姫路城真白き壁や春の月        
⑬白壁に影大揺れの朴の花  

09月27日(火) 11時09分43秒    箱の番人    2022年3月入賞句選者のコメント

荒井理沙選
特選
春泥や門付け鬼の踏む大地 
「門付け鬼」とは地方の古くからある行事なのであろう。「踏む大地」により読み人は本物の鬼に思えて来る。泥を物ともせずに撥ね飛ばして行く大きな鬼の足の裏を想像する。
秀逸
しゃぼん玉一生涯の無音界
確かにシャボン玉は音無しに生まれ消えて行く。当り前ではあるが「一生涯」とした事により 句は上手く成り立っている。
漁網編む老の手さばき鳥雲に
年を重ねたゴッツイ指ではあるが 巧に漁網を編んでいる。季語との取り合わせは抜群である。
並選
春の虹七音階のあるやうな
虹の七色を音階に切り替えた事 あっぱれである。
春疾風しどろもどろの波の音 
波の音を「しどろもどろ」と表現した事に成功した。従って「春疾風」は動かし難い季語である。
踏み出してその深さ知る春の泥
上五から中七へと読み進めると 次に何が来るのだろうかと思いを馳せる。納まりの良い下五に「落ち」を感じた。
雪解急流木瀬々にへし合へり
急な雪解により 増水した河瀬に流された木が ぶつかり合っている。その激しい音と水流の様が目に浮かぶ。
しゃがみこむ揃ひの帽子仏の座
無難な季語を選んでいる。試みに「座禅草」に変えてみた。座禅草は仄かに熱を帯びている。子供等が次々に仏焔苞の中に指を入れ 温もりを確かめ合っている。と深読みしたくなる様な句になる。一応 参考の為に。


09月27日(火) 11時07分56秒    箱の番人    2022年3月入賞句 選者のコメント

芦野信司選
特選
手力男磯巾着を揺らしをり
アメノタヂカラオノミコトはアマテラスを天の岩戸から引き出した怪力神。その神が磯巾着を揺らすという発想の妙。自然と神話を直にぶっつけ、古代人の詩情を醸している。
秀逸
春疾風しどろもどろの波の音
繰り返す崩れる波音のリズムを脅かす疾風。「しどろもどろ」の滑稽味ある擬人化が「春」の雰囲気を作っている。
森なかの笛の音や蛇穴を出づ
「蛇穴を出づ」の七音の季語に挑戦。笛の音のイメージと蛇の相性の良さに、上五のリアリティが結合。ただ、「森なかの」の詰まった語感が気になる。
入選
春泥や運河に並ぶ倉庫群
泥にもめげず働く人たちの姿を彷彿させる。
春泥や土塀にこもを掛けしまま
こもを掛けて土塀を冬の寒さから守ったのであろうか。最後の「まま」で、今はその役目が終わっていることがわかり、季語の語感を深める
ポンポン船艀引きゆく春の風
ポンポン船と春の風の取り合わせの心地よさ。
魚網編む老の手さばき鳥雲に
手捌きの近景と鳥雲の遠景の対比のよさ。
しゃがみこむ揃ひの帽子仏の座
複数人の子供が注視している真ん中に季語の仏の座。この空間構成を簡潔に表現。


09月27日(火) 11時05分00秒    箱の番人    2022年3月の投句一覧 その3

自由題
㊱雪解急流木瀬々にへし合へり         七色仮面
㊲初蝶のひらりと出合う昼下がり        トマト?
㊳手力男磯巾着を揺らしをり          トマト?
㊴蟻穴を出る蟻を踏む独裁者          トマト? 
㊵春みなと別れの曲のおけさ節         弾機
㊶春霞興奮気味の夫なり            紅葉
㊷結願へ十の観音春兆す            因子              
㊸ポンポン船艀引きゆく春の風         荒智十三
㊹嶺々に銀色の雪残りをり           荒智十三
㊺春日差し小窓の並ぶ倉庫群          荒智十三
㊻つくしんぼ黒き指先みせあえし        二進も三進も
㊼瑠璃たては追ひつ迷子の涙かな        二進も三進も
㊽漁網編む老の手さばき鳥雲に         二進も三進も
㊾ローアングルのおかめざくらや車椅子     中山みどり
㊿犬ふぐり質問責めに遭ひにけり        中山みどり
51しゃがみこむ揃ひの帽子仏の座        中山みどり


09月27日(火) 11時03分56秒    箱の番人    2022年3月の投句一覧 その2

兼題 春泥
㉑学生が春泥ザクザクスニーカー        紅葉
㉒春泥や坂へ踏み出す一歩二歩         七色仮面
㉓踏み出してその深さ知る春の泥        砂時計
㉔春泥や夫の手を借り鎌倉路          トマト?
㉕春泥や門付け鬼の踏む大地          弾機
㉖春泥を避けて出会うは初の道         粋果
㉗春泥を厭う少女ら声高し           粋果
㉘避けるも踏むも駅前春の泥          炊き込みご飯
㉙春泥や小さき足跡二つ三つ          炊き込みご飯
㉚春泥や運河に並ぶ倉庫群           荒智十三
㉛春泥の運河人影まばらなり          荒智十三
㉜春泥に足をとられし児の泣けり        咲木かおる
㉝母と子に春泥跳ねる日差しかな        咲木かおる
㉞春泥や土塀にこもを掛けしまま        二進も三進も
㉟春泥や鉄屑の戦車連隊            中山みどり

09月27日(火) 11時02分36秒    箱の番人    2022年3月の投句一覧 その1

兼題 音
①春の虹七音階のあるやうな          七色仮面
②春時雨屋根へ庇へ音変えて          七色仮面
③しゃぼん玉一生涯の無音界          七色仮面
④賽銭の音のかろさや退院の春         翡翠
⑤琴の音はつま弾く指を大切に         紅葉
➅ジェット音切り裂く先の春の空        砂時計
⑦靴の音「夫お帰りと」春の月         トマト?
⑧翡翠の睦み合う音謗る音           鶫
⑨無音の病室スリッパに落花ひとひら      鶫
⑩森なかの笛の音や蛇穴を出づ         因子
⑪春草やのたり聞こゆる馬頭琴         愚夫
⑫酒片手浅蜊の開く音を待つ          粋果
⑬囀りの主はどこかと木を仰ぐ         粋果
⑭黒塀に長唄三味線春の宵           粋果
⑮エレベーター到着音の十二階         炊き込みご飯
⑯小銭入れ十円百円ぶつかりて         炊き込みご飯
⑰ありふれた空に広ごる春の音         咲木かおる
⑱春泥に牛の鈴音とまりけり          咲木かおる
⑲春疾風しどろもどろの波の音         二進も三進も
⑳鼻濁音の歓声漏るる花吹雪          中山みどり

09月27日(火) 11時00分59秒    箱の番人    2022年2月入賞句選者のコメント

星 選
特選
猫柳利休鼠にふくらめり
  猫に鼠。作者の遊び心がいい。
秀逸 
外つ国の鼓草とや風掴む
  ほとんどのタンポポが外来種ときく。タンポポと言えば風を連想させるが下五
  に工夫がみられる。
土塊をほぐす匂いや余寒なほ
   や で切れて土の匂いを受け取った後に「余寒なほ」
   味わい深い句。
並選
寄り道のマックの黄色春の宵
   小腹が空いてコーヒーでも飲んでいるのだろうか。
   マックの黄色。その黄色に菜の花を連想した。春の宵と寄り道。ゆったりとした
   時間を感じる。
七段の雛おはします苫屋かな
    七段の雛は豪華。おはしますと言いながらの苫屋。
    かなの詠嘆がさらに可笑しみを増す。

09月27日(火) 10時59分30秒    箱の番人    2022年2月 入賞句選者のコメント 折山続き

佳作
銀色の声響きをりカーリング
銀色の声という措辞に感心しました。ストーンが滑ると同時に氷の上を選手の声が響き渡った先日のオリンピックの映像がまざまざと浮かびます。ただ、カーリングはまだ季語になっていません。無季の句として戴きました。近い将来季語になるのではないでしょうか。
淡雪や蕾ほんのり紅をさす
うっすらとした雪景色の中、開花間近の梅の蕾か桜の蕾か、ほんのり赤くなっているという景にまず引き付けられます。私も経験したことがあるので共感しました。

残り日を数えてみたし鳥帰る
作者にとって残り日とは何をイメージしているのでしょう。人生の残り日か、嫁ぐまでの残り日か、いろいろなケースがありそうです。読者は読者としての残り日を想定して鑑賞したらいいと思います。私はどこか切なさを感じました。句としてもきちんと切れが入って良いですね。


09月27日(火) 10時57分59秒    箱の番人    2022年2月入選句 選者のコメント

折山 選
特選
土塊をほぐす匂いや余寒なほ
早春の感覚がよく捉えられています。匂いばかりでなくほぐされた土の触感までも伝わってきます。語句の構成も中七の切れ字「や」がいきています。ただ望むらくは「なほ」が歴史的仮名遣いになっているので「匂い」も「匂ひ」としたら如何でしょうか。
秀逸
蒲公英の絮旋風に抗わず
たんぽぽの綿毛が風に身を任せ飛ばされていく一瞬を捉えました。風に飛ばされることを、風に抗わずと表現した点を評価しました。
七段の雛おはします苫屋かな
七段の雛とはかなり豪華なお雛様なのでしょう。それが苫屋という粗末な小屋に飾ってあるという。その落差が妙味ですが、実際は旧家のお屋敷を謙遜して表現しているのかもしれません。それはそれとして、なかなか味わいのある句だと思います。


09月27日(火) 10時54分35秒    箱の番人    2022年2月の投句一覧 その3

自由題
①ミモザ抱きステップ踏んで逢いに行く          凛
②淡雪や蕾ほんのり紅をさす               夢見る乙女
③春の水赤子も吾も育くまれ               イチゴちゃん
④春寒や満月抱え家に着く                イチゴちゃん
⑤ほうれん草私もポパイ力拳               イチゴちゃん
⑥残り日を数えてみたし鳥帰る              杓子
⑦首肩の凝りをほぐすや雛人形              杓子
⑧七段の雛おはします苫屋かな              弾機
⑨如月や馥郁たりぬ河津町                ねんころりん
⑩初誕生前の歩みや春の雪                ねんころりん
⑪猫山に入るを許さず日向ぼこ              ねんころりん
⑫土塊をほぐす匂いや余寒なほ              支離滅裂
⑬抜きん出し蕗の薹旭光の中               支離滅裂
⑭猫柳利休鼠にふくらめり                支離滅裂
⑮言の葉のゆき交う子らの卒業式             月見中福


09月27日(火) 10時52分50秒    箱の番人    2022年2月の投句一覧 その2

兼題 たんぽぽ
①外つ国の鼓草とや風掴む                夢見る乙女
②たんぽぽや女の跳ねる鬼太鼓              弾機
③大地張る蒲公英の葉そこ此処に             イチゴちゃん
④蒲公英の絮旋風に抗わず                夢見る乙女
⑤蒲公英の憧憬消えゆく朝の道              紅葉
⑥蒲公英や君の未来を掴み取れ              ねんころりん
⑦犬じゃるる蒲公英の絮(じょ)のふわふわに        支離滅裂
⑧たんぽぽの集合写真隅に指               月見中福
⑨たんぽぽを踏し怪獣ベビー靴              粋果
⑩蒲公英を一つ浮かべし手水鉢              粋果
⑪子供らに摘まれぬままのたんぽぽや           粋果
⑫オオバコを踏みたんぽぽの春やあり           蛙
⑬たんぽぽはまだ三分咲き日曇る             荒智十三
⑭たんぽぽの冠のせて眠る児よ              荒智十三
⑮サッカーの子らは蒲公英踏み蹴って           荒智十三
⑯蒲公英やチャペルの鐘は坂降る             荒智十三
⑰病室にたんぽぽを持つ子の見舞い            咲木かおる

09月27日(火) 10時51分21秒    箱の番人    2022年2月の投句一覧 その1

兼題 色
①銀色の肌もあらわに猫柳                凛
②段丘の色の移ろひ鐘おぼろ               夢見る乙女
③温色の子猫のまなこまだ開かぬ             鶫
④始発バス色とりどりの春コート             月見中福
⑤寄り道のマックの黄色春の宵              月見中福
⑥黒色のレギンスの女駆ける春              弾機        
⑦七色のチヨツキの釦春野ゆく              イチゴちゃん
⑧銀色の声響きをりカーリング              鶫
⑨デジタルの音色やはやは春の昼             夢見る乙女
⑩差し色のマスクコーデや出勤日             ねんころりん
⑪入学や選り取り見取りの色衣              支離滅裂
⑫幾数多色の溢れる春の原                粋果
⑬空色に緑一刷毛揺れ柳                 粋果
⑭色の無き停車場の街雪模様               荒智十三
⑮子の駈ける春浅き色の公園に              咲木かおる

09月26日(月) 18時50分55秒    箱の番人    2021年12月2022年1月入賞句選者のコメント

芦野選 続き
入選

搾乳の手のやはらかに春隣
手の動きに季節感。ただ、「に」は余分。

水中を覗く子ありて春隣
この句も「て」に余分感がある。説明的になる。

隠れ居の梁にまろまろ初雀
隠れ居るのは、この屋の主人か雀か。そのどちらもか。空想が広がる。

熱燗の溢れて皿は人肌に
皿の無機質感が人肌に変じる目眩。

枕辺のくじを夢見の二日かな
初夢を元日から二日にかけて見る夢だという説もあり、くじを枕のそばに置いて見ましょうという下世話さに俳味がある。

日捲りの少なき日々や毛糸編む
新年までの日数が少ないので頑張って編んでいるのか、残り少ないけど悠々と編んでいるのか。さてどっちだろう。

初日影富士冠雪の赤赤と
横山大観の富士を連想してしまった。「初日影」の選択が良かった。

初昔男手前の茶釜鳴る
新年に去年を思う「初昔」という季語の選択に何事かの事情を男が抱えているように想像される。この季語で良かったのかどうか。

山茱萸の芽ふくよかなり濁り空
春の芽吹きの頃の空を「濁り」と捉えた点が良かった。

爺と婆言祝ぎ軽く雑煮膳
爺と婆とがシンメトリカルに並んでいる。そういう美は確かにある。

09月26日(月) 18時48分59秒    箱の番人    2021年12月2022年1月入賞句選者のコメント

芦野 選
特選
ハーケンの音冴え冴えと刻みけり
「冴え冴え」の季語がよく生きている。冬山の堅い岸壁にうちこむ小さいハーケンの音が山の大気の中にしみとおっていく。
「冴え」のリフレインがハンマーと腕の動きを表現。

秀逸
雪深し庭の置物そのままに
庭にある石や灯篭を覆う雪。そのままの位置ではあるが、深い雪は全く違う姿になっているはず。作者はそれを読者の想像に委ねている。

モノクロを濃くして函嶺雪催ひ
箱根の山は雪により墨絵の世界に変容する。その直前の「催ひ」の時を切り取っている。

冬林檎残りし塀の出水跡
秋の出水跡であろうか。災害を越えて実をつけた林檎。人がどう感じようが、そこにあるのは厳しい自然の姿。

冬満月鈴懸に星宿したる
丸い月に丸い鈴懸の実。そこに星も加わり、寒いメルヘンが生まれる、

古時計抱えてゆくや蚤の市
無季の句。ただし、ぼろ市が冬の季語であり、古時計と相まって年末の季感を濃く感じる。

冬怒涛低き家並みふるえをり
「冬怒涛」の荒々しい姿に続く「低き家並み」はまるで波に飲み込まれそうだ。「ふるえをり」は擬人法だが、家並みを擬人化しているわけではない。作者が震えを感じているのだ。

09月26日(月) 18時47分45秒    箱の番人    2021年12月2022年1月入賞句選者のコメント

荒井選
並選
歌留多取る手は速やかにあらぬ方
 意志不随であったのか素早く手があらぬ方に行ってしまって お手付き?あるいは相手への騙し打ち?スピード感がる。

猫は目の虹彩閉じて春隣
 日脚が伸びて来て 猫が瞳を閉じる時間も長くなって来た。これから恋の季節がやって来て 目力も強くなって来るのであろう。ただ一言「虹彩と目」は重複している。一工夫すれば秀逸句になるかも。

春近し川面連なる山の青
 連山は常緑樹の山なのか 晩冬の山を青と表現したのに新鮮味を感じた。

枕辺のくじを夢見の二日かな 
 宝籤であろうか 当たります様にと枕元に。初夢を「二日」にした捻りが効いている。

ひと息に「虎」の一文字筆初め
 作者は恐らく達筆なのであろう。悪筆の選者にとって羨ましい限りである。「虎」の文字が 確と浮かんで来る。

日捲りの少なき日々や毛糸編む
 今年も残り少なくなった。で 急いで編んでいるのか あるいは意外に早々と片付けが終わり 余裕を持ってゆっくり編み始め
たのかも。

朝まだき障子うっすら紫に
 時間帯を使うと 邪魔になる事が多いが 此の「朝まだき」が良い味を醸し出している。夜明けが近づいて来た。濃紫から薄紫に変わって来た所だろうか。

体温と血圧記す初日記
 他人事とは思えない。初日記に記す事に何ともはや。数値が平常値に?今年は良い年であります様に。


09月26日(月) 18時45分55秒    箱の番人    2021年1月2022年1月入賞句 選者のコメント

荒井 選
特選 天
初昔男手前の茶釜鳴る
 除夜の鐘が鳴ると 一秒二秒前は既に昔になってしまう。さぁて 男手前の心意気に茶釜が鳴り出した。かそけくも何と心地よい音色であろうか。「初昔」と言う季語が少々ずっこけていて可笑しさがある。
 地
炉明かりに五指組み直す影絵かな
 親が子に?兄弟姉妹?狐から犬猫鳥と段々難しくなって来る。レパートリーも無くなって来た。何処と無く懐かしい。
 人
モノクロを濃くして寒嶺雪催ひ
 分厚い雪雲に覆われ箱根山は次第に無彩色になって来た。やがて風景は雪景色へと連想される魅力ある句である。
 秀逸句
指切りを繋いだままに除夜の鐘
 相手は誰なのか 故意に繋いだ指を離さずにいたのか深読みをしたくなる。

元朝の日の出合掌地球から
 上五中七までのフレーズは多々あるが 此の句は下五で成功を遂げ ぐんと景を大きくしている。

朝時雨しずく膨らむ青さかな
 雨が通り過ぎ 雫が膨らんで来る中に 青空の青さなのか それとも葉の緑なのだろうか 美しい光景である。

降るごとに同じ綺羅なし六花
 雪の結晶は 一つとして同じ形は無い。天からの便りである。美しいロマンへの目の付け処に脱帽。

寒酒や父の十八番のドンパッパ
 リズム感があり 読む人は自ずと身を踊らせてしまう。季語の効力は多分にある。

[前のページ] [次のページ]
管理者パスワード